運用の裏側

書いた本人に採点させない、検査ループの作り方

文章や作業を検査し、直し、もう一度検査するという順番を仕組みにした「検査ループ」の作り方です。合格の基準を3つの層に分け、作った本人には採点させないようにしています。

私はAIに文章や作業を任せるとき、できあがったものをそのまま使わず、必ず検査にかけています。この検査を毎回同じ手順で回す仕組みを、ここでは検査ループと呼びます。前のページで触れた「記録を守る仕組み」の中でも、特に手間がかかっている部分です。

検査ループとは何か

検査ループとは、検査し、直し、もう一度検査するという3つの動きを、決まった順番で繰り返す仕組みです。人が担当するのは、この仕組みそのものを組み立てることと、検査を通ったものを実際に使ってよいかを最後に決めることの2つだけです。1回ごとに検査のやり方を考え直す必要がなくなるので、同じ確認を繰り返す手間が減ります。

直す前に、まず検査を先に置く

この仕組みで大事にしているのは、直す作業より先に検査を置く順番です。できあがった直後の文章を感覚だけで直そうとすると、どこがどう基準に届いていないかがはっきりしないまま、なんとなく良さそうな方向へ書き換えてしまうことがあります。先に検査をして、基準を満たしていない箇所を具体的に洗い出してから直すと、直す作業の的が絞れます。

下書きができる 作業が終わった時点 検査 機械と、別の役割が 読み手として見る 基準を満たしたか 合否の分かれ目 直す 作った本人が直す 人が最終判断 公開してよいかを決める 人へ差し戻す 理由を添えて。2回直しても 届かない場合 検査結果 満たした 満たさない 再検査へ 直しは最大2回まで 2回目でも届かない
下書きができた時点から検査に入り、機械と別の役割が基準を満たしたかを見る。満たさなければ作った本人が直して再び検査へ戻り、直しは最大2回まで。2回目でも届かなければ理由を添えて人へ差し戻し、満たせば人が最終判断をする。

合格の基準を3つの層に分ける

検査の基準は、1つにまとめず3つの層に分けています。1つ目の層では、機械的に数えられる形式的な誤りだけを見ます。禁止している言い回しが入っていないか、記号の対応が崩れていないかといった、機械が文字を数えれば分かる項目です。2つ目の層では、書いた側とは別の役割が、読み手にとって分かりにくい箇所がないかを判定します。文のねじれや、話のつながりが崩れていないかなど、機械では数えにくい部分を見ます。3つ目の層は、私自身が最後に判断する層で、公開してよいかどうかと、文章そのものの良し悪しを決めます。文章の良し悪しという判断は、機械にも、検査を担当するAIにも任せていません。任せてしまうと、判定を通すためだけの書き方に寄っていくと考えているためです。

作った本人に、自分の仕事を採点させない

この仕組みでもう1つ守っている決まりがあります。文章や作業内容を検査するとき、それを作った本人には検査させないという決まりです。自分で作ったものを自分で採点すると、どうしても甘い判定になりがちです。作った側の立場のままでは、読み手にとって分かりにくい部分にも気づきにくくなります。検査する役割を、作った本人とは別に置くことで、この甘さを防いでいます。

直しの回数に上限を置き、機械の合格を目標にしない

直す作業には上限を決めています。検査にかけて基準に届いていなければ、直してもう一度検査にかけますが、この直しと再検査の回数は最大2回までと決めています。2回直しても基準に届かない場合は、仕組みを途中で止めて、私自身の判断に差し戻します。上限を決めていない仕組みだと、直す作業がいつまでも終わらなくなるからです。また、直した後には検査を通すという順番も崩しません。直しただけで検査を省略すると、実際に基準を満たしたかどうかを確かめないまま次に進んでしまうことになります。

最後に、この仕組みを使ううえで注意している点を書きます。機械の検査を通ること自体を目標にはしていません。合格を目標にしてしまうと、内容の質を上げるためではなく、合格の基準を通すためだけに文章を書き換えてしまうことがあるからです。検査ループが決めているのは、公開してよい水準に届いているかどうかの土台であって、文章として良いかどうかの最終判断は、いまも私自身が担っています。

出典

  1. Addy Osmani, "Loop Engineering"(2026年6月公開)/https://addyosmani.com/blog/loop-engineering/